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第1法則。攻撃力=兵力数×武器性能(質)
第1法則の攻撃力は、兵力数×武器性能(質)で表わされます。
もし双方の武器性能と兵士の技能に変わりがなければ、攻撃力は兵力数に比例することになります。
第1法則は、まず刀や槍など戦闘できる範囲が狭い兵器を使い、次は双方が接近し、しかも1対1で戦ったときだけ成立します。そのため第1法則のことを「接近戦、一騎打戦の法則」と呼んでいます。
しかし兵力数が少ない方が、兵力数が多い方から「包囲」されるとこうはなりません。兵力数が多い軍から包囲されて、皆殺しされる恐れもあります。
兵力数が少ない方が包囲されないためには山の険しい所や森が深い所など、大軍が行動しにくい所を戦場に選ぶ必要があります。これは「特別大事な条件」になります。
法則を考えたランチェスターは「山が険しくて深い谷間を進軍する1000名の兵士は、3人の敵兵によって行く手が阻まれる」と説明しています。
日本では1500年頃、国内は各地で戦争が起きていました。戦国時代初期から中期の武器は槍が中心になっていました。槍の戦いは、兵士が槍を構えて平行線上に並びます。そのあと合図とともに敵をめがけてドーと走っていき、体当たりをする状態でぶつかります。そのため槍の戦いを「体当たり戦」とも呼んでいます。
こういう状態で100人と60人が戦った場合、60人側が全滅したとき100人側も60人が死亡するので、損害の出方は「1対1」になります。
次に、200人と60人が同じような戦いをした場合、60人が全滅したとき200人側もやはり60人が死亡するので、損害の出方は「1対1」になります。これを効率でみると「1.0」になります。
検証。日本の戦国時代の戦いを調べてみると裏切りや奇襲攻撃を受けた場合を除くと、初期兵力数の差に関係なく、双方の戦死者の数はほぼ同数になっています。ヨーロッパでも中世と呼ばれる時代は何回となく戦争が行なわれていたので、データを調べるとほぼ同じようになっているはずです。
次は第2法則です。
第2法則。攻撃力=兵力数2×武器性能(質)
第2法則の攻撃力は、兵力数2×武器性能(質)で表わされます。
もし双方の武器性能と兵士の技能に差がなければ、攻撃力は兵士の数の2乗に比例することになります。
第2法則は、まずライフル銃や機関銃など射程距離が長い兵器を使い、次は双方が離れて戦ったときだけ成立します。2乗になる根拠は「確率の法則」が成立するからです。そのため第2法則のことを「間隔戦、確率戦の法則」と呼んでいます。射程距離が長い兵器を効果的に使うには、平地で見通しが良い所を戦場に選ぶ必要があります。
ではなぜ双方の力関係が2乗比になるか「5人と2人」の兵士が川を挟み、ライフル銃で撃ち合った場合で考えてみましょう。
5人側は2人の敵兵から攻撃を受けます。このとき5人の中の誰が狙われるかの確率は「5分の1」になります。5分の1の攻撃を2人から受けるので、5人側の計算上の損害は5分の2になります。
次に2人側も相手から攻撃を受けますが、2人の中のどちらが狙われるかの確率は「2分の1」になります。2分の1の攻撃を5人から受けるので、2人側の計算上の損害量は2分の5になります。分母を調整すると双方の損害量は、「10分の4対10分の25」になります。両方に10をかけて分母を消すと、双方の損害量は「4対25」になります。攻撃力はこの反対になるので、5人側の攻撃力は「25」になり、2人側の攻撃力は「4」になります。このように双方の本当の力関係は2乗比になるのです。
小学校で勉強が嫌いになるのが分数からといわれるように、中にはこの段階で早くも解らなくなった人もいるでしょうが、今説明したものをレポート用紙に書いたあと、ゆっくり考えると次第に解ってくるはずです。
全社的経営のやり方にランチェスターの法則を応用する場合、ここのところはとても大事になるので、
第1法則と 第2法則の違いについて別の角度からもう一度説明しておきましょう。
刀や槍のように戦闘できる範囲が短い兵器を使い、兵力数の比が「1対0.5」と敵の半分で戦った場合、戦闘時の真の力関係もやはり「1対0.5」になります。このときの効率は「1.0」となることから、敵の半分の兵力で戦った側には「損も得」もありま せん。
「1対0.33」と敵の3分の1で戦った場合はどうでしょうか。戦闘時の真の力関係もやはり「1対0.33」となります。このときの効率は「1.0」となることから、敵の3分の1の兵力で戦った側には「損も得」もありません。
これに対してライフル銃や機関銃のように射程距離が長い兵器を使い、双方が離れて戦いをすると結果が大きく変わります。「1対0.5」と敵の半分で戦った場合、戦闘時の真の力関係はこの2乗になって「1対0.25」になります。このときの効率は「0.5」になることから、敵の半分の兵力で戦った方の効率は50%も低下します。
次に「1対0.33」と3分の1で戦った場合、戦闘時の真の力関係はこの2乗で「1対0.11」になります。このときの効率は「0.33」になることから、敵の3分の1の兵力で戦った方の効率はなんと「67%」も低下します。これでは兵力数が少ない方が、ひどく損をすることになります。
つまり「兵士の数は同じ」であったとしても、使用する兵器の違いと、戦い方の違いによって結果が大きく変わるのです。これを数字によってはっきりと示したのが、ランチェスターの法則になります。
今の事例をもとに、次の事例を考えて下さい。
もしあなたが兵力数が多い「優勢軍の将軍」であったら、部下の兵士にどのような命令を出すでしょうか。賢明なあなたは即座に、ライフル銃や機関銃のように射程距離の長い兵器を使い、次に見通しが良い平地を戦場に選び、さらに相手と離れて戦うようにせよと命令するでしょう。こうすると2乗作用が生じるので、有利であることがより有利になるからです。
反対にあなたが「劣勢軍の将軍」であったら、部下の兵士にどのような命令を出すでしょうか。賢明なあなたは即座に、 刀や槍のように戦闘範囲が狭い兵器を使い、次に山が険しい所や森が険しい所を戦場に選び、さらに敵に接近して一騎打戦をせよと命令するでしょう。こうすると敵と離れて戦った場合と比べると損害量が少なくなるのではるかに有利になります。
戦いをするとき、効果的な戦いをするということは「どの将軍」にとっても同じです。しかし兵器の選び方や戦場の選び方、さらに戦い方には「2種類の方法」があり、しかもその内容は全く逆さまのアベコベになっているのです。
射程距離が長い兵器を使い、次に見通しがよい平地を戦場に選び、さらに敵と離れて戦うことで2乗作用が起きるようにするのを「優勢軍の戦略」と呼びます。
次に戦闘範囲が狭い兵器を使い、次に山が険しい所や森が深い所を戦場に選び、さらに敵に接近して一騎打戦をするような戦い方をするのを、「劣勢軍の戦略」と呼びます。
ここのところが、ランチェスターの法則を経営戦略に応用するとき最も大事な「基本部分」になるとともに、ランチェスター戦略では「ハードの部分」にもなるのです。
小さくても強い会社になれる弱者必勝の戦略。
小さくても特徴を作れば利益性が必ず良くなる
従業員20人以下の会社では業績の98%が、社長1人の戦略実力で決まります。つまり業績の根本原因は社長自身になるのです。
こういう中で業績を良くするには、まず社長の戦略実力を同業者100人中、5番以内に高めなければなりません。
ランチェスター・弱者必勝の戦略ルールを、経営全体に統一して適用したのが、この教材です。ランチェスター法則は難しいと思われていますが、竹田陽一が解かりやすく説明。
小企業の経営戦略、スモールビジネス・基本編・実践編